前回は個人が寄付を行った場合の税金や確定申告について見ていきましたので、今回は法人のケースです。
法人の場合、原則は控除等でなく発生時に経費として損金算入を行っていくのですが、個人の場合と比べ金額に多くの制限が設けられています。
利益を移転することで租税回避に寄付が利用されないためです。
みていきましょう。
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法人が支出した寄付金の損金算入について
法人が金銭等の寄付を行った場合、その相手先によって税法上の経費として認められる金額が異なります。
1.一般の寄付金(次の2~6に該当するものを除きます)の場合、次の金額を損金算入の限度額とします。
(資本金等の額×当期の月数/12×2.5/1,000+所得の金額×2.5/100)×1/4=損金算入限度額
わかりやすくいうと、当期が12か月の場合、資本金等の額の0.25%と所得の金額の2.5%の合算額の4分の1が限度となります。
例えば資本金等の額が500万円、当期の所得の金額が200万円だとすると、
(500万円×0.25%+200万円×2.5%)×1/4=15,625円
といった具合です。かなり少ないですよね。
利益移転防止のためですが、もらった側ではもちろんその全額を収益として認識します。
一方、国や自治体などに対する寄付金については全額損金算入が認められており、その他公益性の高い法人や団体などに対する寄付についても限度額が別枠で設けられています。
下記のとおりです。
2.国または地方公共団体に対する寄付金
全額損金算入されます。
3.指定寄付金
財務大臣が指定する一定の法人や団体に対する寄付金をいいます。
例:赤い羽根共同募金や国立大学法人に対するものなど
全額損金算入されます。
4.特定公益増進法人等に対する寄付金
公益法人等のうち公益の増進に著しく寄与するものとして認められた一定の法人や団体に対する寄付金をいいます。
例:日本赤十字社や社会福祉法人に対するものなど
次の金額を限度として損金算入されます。
(資本金等の額×当期の月数/12×3.75/1,000+所得の金額×6.75/100)×1/2=特別損金算入限度額
※以上の結果損金の額に算入されなかった金額は一般の寄付金の額に含めます。
ちなみに上記一般の寄付金の項と同条件であった場合、限度額は76,875円となります。
5.特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭
例:日本白血病研究基金に対するものなど
一定の要件を満たすものに限り、4の寄付金の額に含めて計算を行います。
6.認定NPO法人等に対する寄付金
特定非営利活動法人(NPO法人)のうち一定の要件を満たすものとして認められたものなどに対する寄付金をいいます。
例:国連UNHCR協会や国際協力NGOセンター、フリー・ザ・チルドレン・ジャパンに対するものなど
4の寄付金の額に含めて計算を行います。
7.一定の政治活動への寄付金
特別な取り扱いはなく、一般の寄付金として計算を行います。
手続きについて
上記2~6の寄付金の額につき損金算入するには、確定申告書にその金額を記載し、受領書や明細書など所定の書類の添付するとともに、所定の書類の保存を要します。
まとめ
経団連が掲げる企業の社会貢献の分類として、次の5つが挙げられています。
産業活動
資金提供
企業施設
人材提供
その他、総合的な活動
このうち上からふたつ目の「資金提供」活動とは、主に金銭等の寄付を指します。
社会貢献に資する団体等に資金を提供することで、間接的に社会貢献活動に参画しようとするものです。
多くの企業がコーポレートサイトに「社会貢献」を掲げつつも、企業活動を通してどういった形で社会へコミットできるのか経営者はみな頭を悩ませています。
そんな中、中小企業でも資金に少しばかりの余裕さえあれば比較的手軽にできる社会貢献活動のひとつとして、寄付行為が挙げられます。
地元のお祭りへの協賛金や町内会への寄付金(※)だって立派な地域貢献です。
※一般の寄付金に該当(会社の宣伝目的のものは広告宣伝費として取り扱います)
こんなご時世ですからみな自分のことで精一杯だと思います。しかしそんな中でも、自分もしくは自分たちに何ができるのか常に思考されている方々の強さと豊かさには、心底敬服いたします。
おつかれさまでした。