日本人はもともと諸外国と比べチャリティー意識がかなり低いと言われています。
「人の手助け」「お金の寄付」「ボランティア活動」の3つの観点から国民のチャリティー意識を評価した世界寄付指数(World Giving Index)では、日本は長年100位以下が定位置となっています(144か国中)。
もちろんG7参加国の中ではぶっちぎりで最下位です。
ちなみに2018年の第1位はインドネシア、2位はオーストラリア、3位はニュージーランド。
アメリカと比べても、1世帯あたりの年間寄付額がアメリカはおよそ260,000円であるのに対し日本はおよそ2,400円となっており、「与える」という行為に対する意識がかなり希薄なのがこの数字からもうかがえます。
お金そのものに対する価値観やコミュニティ内外での相互扶助意識の違いなど、文化的要素(宗教的なものもあるでしょう)が非常に大きいものと推察されますが、「オモテナシ」で五輪招致を成功させた国としての違和感はもちろんのこと、一国民としてやはりいくらか寂しいものがあります。
しかしそれでも、東日本大震災や熊本地震など有事の際には日本中から多くのボランティア参加者が集い、たくさんの義援金が寄せられ、いやいやこの国も捨てたもんじゃないぞなどと安堵する思いもあったりするところではあります。
さてここからが本題ですが、そういった義援金や寄付金などを個人のお財布から支出した場合、税制上の取扱いはいったいどうなっているのでしょうか。
納税を少なくすることが一番の目的ではないにせよ(そういう方もいらっしゃるかもしれませんが笑)、自らの意志でお金を「与える」先を選択でき、その結果税金が少し安くなるのであればそれはやはり嬉しいものです。
所得税及び住民税に「寄付金控除」というものがあります。
みていきましょう。
寄付金控除の対象は「特定寄付金」のみ
個人が特定寄付金を支出したときは、寄付金控除として一定の金額が所得金額から差し引かれます。
特定寄付金とは以下のものをいいます。
1.国または地方公共団体に対する寄付金
2.指定寄付金
財務大臣が指定する一定の法人や団体に対する寄付金をいいます。
例:赤い羽根共同募金や国立大学法人に対するものなど
3.特定公益増進法人等に対する寄付金
公益法人等のうち公益の増進に著しく寄与するものとして認められた一定の法人や団体に対する寄付金をいいます。
例:日本赤十字社や社会福祉法人に対するものなど
4.特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭
例:日本白血病研究基金に対するものなど
5.認定NPO法人等に対する寄付金
特定非営利活動法人(NPO法人)のうち一定の要件を満たすものとして認められたものなどに対する寄付金をいいます。
例:国連UNHCR協会や国際協力NGOセンター、フリー・ザ・チルドレン・ジャパンに対するものなど
6.一定の政治活動への寄付金
以上のものとなります。
例えば地元のお祭りへの寄付などは対象外ですし、コンビニのレジ横にある募金箱への寄付も支払証明ができないため控除は受けられません。
寄付金控除っていくら控除できるの?
控除額は次の算式で計算します。
1年間に支出した特定寄付金の金額(※)-2,000円=寄付金控除額
※ 所得金額の40%が限度となります
2,000円は常に控除の対象外となり本人負担の支出となります。
税額控除について
政党や政治資金団体に対する寄付金または認定NPO法人等や公益社団法人等に対する寄付金については、所得控除と税額控除のうちどちらか有利なほうを選択することができます。
上記した所得控除額の30-40%が控除額となりますので、その方の所得(税率)によってどちらかお得なほうを選びましょう。
お金以外の物品寄付(土地等の不動産やパソコンなど)って寄付金控除できるの?
結論からいうとできます。
その場合は時価や簿価(購入時の金額から減価償却費を除いた金額)などで寄付の金額の決定がなされるようです。
ただし、時価査定された場合に査定額が簿価より大きな金額であった場合、寄付した側で譲渡所得が発生する可能性が高いので、その点だけどうぞご注意ください。
せっかくのご厚意にケチがつきかねませんから…。
手続きについて・まとめ
寄付金控除(税額控除含む)を受けるためには、所定の事項を記入した確定申告書に、受領書や認定書、振込みの際の利用明細票などを添付し税務署へ提出する必要があります(ふるさと納税のワンストップ特例除く)。
また、住んでいる地域の都道府県共同募金会や日本赤十字社その他自治体の指定のある寄付金については住民税の税額控除を受けられる場合がありますが、その場合もあわせて確定申告でお手続きできます。
「与える」という体験の不足がますます日本人を寄付から遠ざけているという負の循環もあるように思います。
昨今、直接的なお金の支出に依らず、チャリティーTシャツなどのチャリティーグッズの購入やチャリティーイベントへの参加を通して間接的に寄付行為に参加する機会も増えてきていますが、とても良いことなのではないでしょうか。
また、政治や社会に対する不信・不満から納税を嫌う方も相当数いらっしゃるようにみえますが、そのような方は一度、寄付金としてご自身の意志で自分のお金の支払先を選択してみるということを検討してみてはいかがでしょうか。
あくまで所得の控除ではありますが、納税よりもずっと直接的な社会貢献ができるかもしれませんし、その結果少しでもご自身が気分よくお金を支払えるようになるのであれば、それほど悪くはないかもしれません。
最後に、ふるさと納税について
ふるさと納税も「納税」とはなっていますが、正確には自治体に対する寄付行為となります。
所得に応じた限度額を上限として、2,000円を超えた部分が住民税と所得税から控除されます(税額控除)。
大阪府泉佐野市などをはじめとするいわゆる特産品フィーバーが過熱していますが、総務省の今後の対応次第で制度自体がどうなるのか不透明なところとなっています。
なお、支出先が年間5自治体以内であればワンストップ特例制度の利用により確定申告を省略することもできます。
その場合にはふるさと納税を行う都度、ワンストップ特例制度の申請書を自治体へ提出する必要がありますのでお忘れなきようご注意ください。
法人の寄付金の取扱いはまた機を改めます。
それでは、おつかれさまでした。
細川