事業を営まれている方や経理を担当されている方などはなんとなくにでも聞いたことはあるかと思いますが、よくわかんないよという方も中にはけっこういらっしゃるのではないでしょうか。
それぞれ正式名称は次の通りとなります。
中退共=中小企業退職金共済制度
小規模共済=小規模企業共済
このふたつの違いを通してそれぞれの対象や目的などをお話ししていきたいと思います。
中退共=中小企業の退職金制度
◇対象は中小企業で働く従業員
◇掛け金は5,000円~30,000円の任意選択
◇毎月の支払額は法人の費用となる
大手の企業と違い、中小零細企業となると一従業員の退職金としてまとまった金額を用意するのは資金繰りの点からもかなり難しく、また、通常支給ですとその支給時に支給額全額が一括で費用計上されてしまうため、銀行等からの融資に頼っている会社などでは赤字決算を避けたいという観点からも退職金支給のハードルは低くありません。
しかし良質な人材確保の点や、またはかわいい従業員の生活を守るため、できることなら退職金を支給したいと考えられる経営者さまも少なくありません。
そこで検討したいのがこの中小企業退職金共済制度、いわゆる中退共です。
会社からすると、イメージとしては退職金の分割払いです。
月額5,000円から30,000円の範囲で従業員ごとに自由に掛け金を設定でき、その支払額は会社の経費となります。
名前の通り中小企業を対象とするものですが、その範囲は広くかなり利用しやすいものとなっています。
また退職金は機構から直接従業員へ支払われるので支給時会社の利益には一切影響を与えないため、利益管理の面からもとても優れた制度となっています。
一方デメリットもあります。
◆原則として全従業員を加入させる必要がある
◆掛け金は一度支払うと戻ってこない
◆短期間(目安として2年)で退職した場合元本割れする
一度掛け金を支払うともう完全に法人の手からは離れ戻ってきません。
加えて毎月の掛け金を上げる分にはよいのですが、減額するとなると従業員本人の同意が必要となり、その手続きも煩雑です。
掛け金の金額設定は資金繰りの点からもきちんと計画的に行う必要があります。
また2年未満で本人が退職してしまった場合元本割れとなり、さらに1年未満での退職となるとまったくの0となってしまう点も要注意です。
小規模企業共済=中小経営者・個人事業主のための退職金制度
◇対象は中小企業の役員 及び 個人事業主
◇掛け金は1,000円~70,000円の任意選択
◇毎月の支払額は個人の所得控除となる
◇積立額相当額まで借り入れが可能
一方の小規模企業共済ですが、対象は中小企業の経営者及び個人事業主となります。
一番の違いとして、支払った掛け金は法人の費用とはならず、かわりにその全額が社長または事業主の個人の所得控除の対象となります。
「掛金払込証明書」なるものが発行されますので年末調整または確定申告の際、生命保険の控除証明書などとあわせて提出してください。
また、小規模共済には「契約者貸付制度」という制度があり、積み立てている金額の範囲内で機構から資金を融通してもらうことができます。
月々30,000円を10年積み立てている場合、30,000×12か月×10年=最大3,600,000円の借り入れが可能となるため、ビジネス資金がショートしそうな際の危機対応機能を有しているという点でも有用となります。
ちなみに小規模共済の場合、やむを得ず解約した場合には解約返戻金を受け取ることもできますが、元本割れのリスクは高いです。
デメリットとしては
◆法人の節税対策としては使えない
◆加入期間が短い場合(目安として20年)元本割れする
あたりとなります。
退職金は役員の退任、法人の解散、個人事業の廃業などにあわせて支給され、それまで原則お金は手元から離れますので、ご家庭の財布とよく相談をし金額設定する必要があります。
まとめ
労働力が強い売り手市場となり久しい中、中小企業がいかに優秀な人材を確保をするかが大きな課題となっています。
働く側からしますと、自身や家族の生活を守らなくてはならないため「将来の安全・安心」というのは職場選択をする上で非常に優先される要素です。
一方で日々努力されている企業側ですが、それでも大きなまとまったお金を一括で用意するのはなかなか難度が高く、どうにも頭を抱えるところでしょう。
そんなとき「退職金ムリ!出さない!」と判断してしまう前に、一度中退共の検討をしてみてはいかがでしょうか。
会社の資金繰りに与える影響もずっと小さくなり、毎期の利益管理も容易となります。
求人票に「社保完備!中退共加入!」と書けるのは良好な労働力確保の観点からも、強いです。
また、社長や個人事業主個人の生活を守るための小規模共済も非常にメリットの大きいものとなっています。
特に個人事業主については社会保険に加入されていない方も多いかと思います。
退職金支給時はもらった方の所得となりますが退職金自体が税制上かなり優遇されていますので、ご自身はもちろんのことご家族の将来を守るために、生命保険などとあわせて利用を検討してみてはいかがでしょうか。
それでは、おつかれさまでした。
細川