会社事業は原則として利潤の獲得を目的としていますので、毎期安定してもうけが出てくれれば言うことなく理想的なのですが、景気や市場環境、事故、災害、その他企業努力だけではどうにもならない要素からも多分に影響を受けるため、残念ながらそうはいかないことも多々あります。
もともと『事業年度』というのは、事業を続けている限り永続的に続く時間を、業績把握や納税、公平性などのために人為的に区切ったものです(期間損益計算といいます。多くの場合1年)。
1年目は30円のプラス、2年目は20円のマイナス、3年目は5円のプラスであった場合、本来は通算すると15円しかもうけが出ていないはずなのに、30円と5円にのみ課税され20円が無視されてしまうと人為的に区切ったがゆえの損が出てしまいます。
今回はそういった期間損益計算のゆがみを是正するためのふたつの制度についてまとめてみました。
なおここでいう『欠損金』とは、いわゆる会計上の赤字とは異なり、法人税上の調整額を加減算したものになります。
繰越控除について
概要
欠損金の繰越控除制度とは、欠損金が生じたとき、その欠損金額を一定の要件のもと、以後10年間の事業年度で生じる所得から控除できる制度です、
適用の要件
当制度を適用するには、欠損が出た事業年度以後、継続して青色申告書を提出している必要があります。
控除できる金額(資本金1億円以下である場合等)
資本金1億円以下である場合等には、所得金額の全額が控除対象となります(もちろん繰り越した欠損金額を限度とします)。
なお、欠損金は古いものから順次繰り越します。
繰戻還付について
概要
一定の要件を満たす法人につき、欠損金が生じたとき、その欠損金を前事業年度の所得に繰り戻して、すでに納付済みの法人税額の還付を請求することができる制度です。
適用の要件
以下すべての要件を満たす必要があります。
1.継続して青色申告書を提出している
2.資本金1億円以下である(普通法人である場合)
3.一定の大法人による完全支配関係がない
還付請求できる金額
還付請求金額=前事業年度の法人税額×当事業年度の欠損金額/前事業年度の所得金額
例えば以下のケースの場合
前事業年度の課税所得:800万円
前事業年度の法人税額:176万円
当事業年度の欠損金額:500万円
請求額は
176万円×500万円/800万円=110万円
となります。
個人の場合
上記の規定は所得税においても適用があります。
個人の場合、欠損金ではなく『純損失』といいます。
純損失とは、不動産所得、事業所得、山林所得、総合譲渡所得から生じた損失のことをいいます。
要件についてはそれぞれほぼ同様ですが、繰越控除の繰り越し年数は3年となっていますのでご注意ください。
まとめ
これらの制度は欠損の発生した期から継続して青色申告書を提出する必要があります。
法人の場合はほぼ心配いらないと思いますが、個人の場合『赤字だからいいや』と1年でも申告を忘れたりすると即適用外となってしまいますのでご注意ください。
また、あわせて通常の申告書に一定の書面を添付する必要があり、その金額の規模によっては課税関係に大きな影響を与えるため、適用の際には税理士等の専門家に相談することをおすすめします。
***編集後記***
設楽悠太選手のツインターボばりの大逃げに彼の覚悟を見ました。
東京オリンピックでも彼の走りが見たいところですが、ハードルは中々に高そうです。