そもそもシリーズ第2回は固定資産の減価償却についてお話ししようと思います。
経営者にとっては『購入時に一括経費にならない厄介者』扱いされがちな減価償却資産ですが、いったいなぜこのような計算が必要なのか。どのように計算をしているのか。ゆっくり見ていきましょう。
なぜ減価償却をするのか
そもそもなぜこのような面倒くさい計算をしなければならないのでしょうか。
ひとつめの理由ですが、一部の例外を除き、モノというのは通常時の経過とともにその価値は薄れていきます。減価償却には、その時の経過による減価(価値が減ること)を数字化して費用化していく機能があります。
もうひとつの理由として、少しだけ難しい言葉を使いますが、会計の基本原則のひとつに『費用収益対応の原則』というものがあります。言葉は覚えなくて大丈夫です。
この原則は簡単に言うと、今期の決算書に計上する経費はできる限り今期の売り上げに対応しているものだけにしましょう、とするものです。 減価償却もこの原則に則ったものとなっています。
例えば営業車を買ったとしましょう。
車というのは通常何年も使用するものですので、購入した今期のみならず、来期も再来期も継続して会社の営業活動、利益獲得に貢献してくれるはずです。
その貢献を、数字化して帳簿に計上してあげるプロセスが、減価償却なのです。
減価償却の対象資産
有形固定資産
建物、建物附属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具・器具及び備品
無形固定資産
漁業権、実用新案権など
生物
馬、牛、りんご樹など
減価償却資産から除かれる資産
土地、書画骨とう、貴金属など(時の経過に応じて減価しないため)
建築中の資産、貯蔵中の資産(今期の利益獲得に貢献していないため)
注)商品や製品などの棚卸資産は固定資産ではないためそもそも減価償却の対象とはなりません!
減価償却4つのポイント
減価償却計算を行う際のポイントとして『取得価額』『償却方法』『耐用年数』『残存価額』があります。
1.取得価額(購入した場合)
その資産の購入金額に、引取運賃や購入手数料などの付随費用を含めた金額になります。
また購入後、その資産を事業に使用する際にかかった費用(すえ付費や試運転のためにかかった費用など)も取得価額に含めます。
2.償却方法
償却方法は定額法、定率法、生産高比例法、リース期間定額法などがあるのですが、ここではオーソドックスな定額法と定率法のみ見ておきましょう。
定額法とは
取得価額に定額法償却率を乗じて償却費をもとめます。
定率法とは
前期末の帳簿価額に定率法償却率を乗じて償却費をもとめます。
償却方法の選定(平成28年4月1日以降に取得したもの/法人の場合)
資産の種類ごとに償却方法が定められています。
◇建物・建物附属設備・構築物・・・定額法
◇その他の有形固定資産・・・定率法(定額法も選択可。届出の必要があります)
◇無形固定資産(鉱業権以外)・・・定額法
(※その他のものは国税庁HP参照)
3.耐用年数
法定耐用年数
耐用年数はあらかじめ資産の種類ごとに細かく設定されています。
この年数のことを法定耐用年数といいます。
例えば営業で使用するような普通車は6年、軽自動車は4年。事務用のパソコンは4年ですし時計は10年となります。
くわしくは国税庁ホームページをご参照ください。
中古資産の場合(再掲)
次のいずれかを耐用年数とします。
A.残存耐用年数の見積もりが可能なもの・・・その見積もった使用可能年数
B.残存耐用年数の見積もりが困難なもの・・・次の年数(最低2年)
a.(新品で購入した場合の)耐用年数の全部を経過した資産 法定耐用年数×20%
b.耐用年数の一部を経過した資産 (法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)
C.改良費等(省略)
実際は耐用年数を正確に見積もることは困難または手間なケースが多く、実務上Bの年数をとることがほとんどです。
例えば中古のレンガ造りの煙突を買ったとしましょう(笑)
法定耐用年数25年ですから、10年落ちの煙突ですと
(25-10)+10×20%=17年
になるといった具合です。
4.残存価額
残存価額とは、減価償却を終えた資産の帳簿上の処分額のことをいいます。
平成19年4月1日以降取得分については、残存価額は1円となります。
例えば50万円の応接セットを購入した場合、499,999円を耐用年数にわたって償却し、残った1円はその応接セットを売却したり廃棄したりするまでずっと帳簿上に残ったままになります。
まとめ
いかがでしょうか。
減価償却は実はとても奥が深く、上記した以外にもたくさんのイレギュラー要素があります。リース物件を資産計上した場合や資産取得のために一定の補助金を受け取った場合などにはさらに細かい論点がいくつも出てきてしまいます。
しかし基本の『基』はここに書いた通りですので、よければ参考になさってください。
また、消費税については減価償却という概念はありませんので、原則購入した際に全額税額控除が可能です。
なお特別償却等については過去の記事がありますので、よければあわせてどうぞ。
それでは、おつかれさまでした。
***編集後記***
今日はわれらがジェフは大宮アルディージャ戦に挑みます。
アウェイなのでDAZN観戦ですが、強敵相手になんとか格好つけて欲しいところです。