『AI技術の進歩は人類から仕事を奪う』と言われ久しいですが、私のお仕事『税理士』という職もその例に漏れず、というよりその『なくなる仕事』の急先鋒のような言われ方をよくします。
もし本当にそう思われている方がいらっしゃるとすれば、もしかするとその方は会計事務所体験に乏しいか、残念ですがいまだ良質な会計事務所に巡り合えていないのかもしれません。
同様のことは、90年代初頭、JRが自動改札機の導入を決定した際にも言われました。
鉄道マンの仕事が機械に奪われるーー。
ところが、機械は鉄道マンたちから仕事を奪うどころか、彼らを大いに助けます。
本来の鉄道業務の雑務から解き放たれた彼らは、その良質な立地や資本、人材などを活かし、小売やサービス業など多様なシーンに活躍の場を拡げ大きく業績を伸ばしていきました。
彼らはうまく機械と手を結ぶことができたのです。
そして我々のいるこの税理士業界でも今後、『AIに駆逐される』側と『AIと手を結ぶ』側の二極化がかなりの急ピッチで進んでいくように思います。
ちょうど数日前、新規のお客さんのところへお伺いし、丸一日かけて資料の整理や今後の経理の進め方など導入部分についての打ち合わせを行ってきたのですが、私にとって当たり前の会話、当たり前のコミュニケーションをしていたつもりだったのですが、『全然違うね』と言われました。
『会計事務所の人に悩みなんて相談したことないもん』
そちらの会社さんはそれまで記帳をはじめとするすべての経理業務を会計事務所に丸投げされていました。
毎月1回、出納帳や通帳のコピーなどを渡し、その後先月の数字の報告を受け、5-10分程のコミュニケーションをとっておしまいでした。
ですので出納帳の書き方は数十年間間違えたまま指摘もされず、減価償却の仕組みもわからないまま。
経営上の悩みや迷いはすべて家族の中で解決するほかなかったのです。
以前の会計事務所はいわゆる『記帳代行』をウリにし、数字をつくり、数字を報告することを生業になさっていたのですが、『それ以上』にはおそらく関心がなく、また事業者側も、『そこまで』が会計事務所の仕事だと思いこんでいました。
さらには他所を知らないのでそのことを疑問にも不満にも思っていなかったのです。
そして、残念なことに『そこまで』 の仕事こそ、AIの得意とする領域であろうことは想像に難くはありません。
この業界の平均年齢は65歳を超え、全税理士の60%超が60歳を超えています。
今でもPCがうまく使えず手書きで申告書を作成されている先生は一定数いらっしゃいます。
淘汰される層の存在は否定できません。
しかし個人的には、今後我々のような若い世代が『AIと手を結ぶ』側としてこの業界を盛り上げていくことで、なにか大きなイノベーションが起こらないかと、つい期待してしまいます。
人がやってもAIがやっても同じ解答が出てくるような機械的性質の強い箇所はAIに任せ、空いたスペースでなにか面白いことができやしないか。
今だって経営分析や相談業務・コンサルティングなど、会計事務所が『付加価値』としている業務がありますが、そちらの分野にかかるウェイトは今後さらに大きくなっていくはずです。
うまく使えばお客さんはもちろんのこと、事務所や事務所で働くスタッフだってみんなもっと幸せになれるのではないか。
AIと手を結び、どのようにAIを活かし、何を提供するのか。
会計事務所の力が試されます。
この業界は、今、大きく変わろうとしています。
***編集後記***
走るのはある程度いくらでも走ることができるのですが、歩くとすぐに疲れてしまいます。
検索してみると意外と同じような悩み?を持つ方は多いらしく、だいたいが使う筋肉の違いに起因するものか、靴が足に合っていないか、とのこと。
個人的には身体が硬~いのも大いに影響ありそう…。