5つめの経営資源
かつて『経営資源』といえば『ヒト』『モノ』『カネ』の3つが言われましたが、2000年代に入り情報化社会が進むにつれ、いつの間にか第4の要素として『情報』が挙げられるようになりました。
ここでいう『情報』とは電子データのみならず、試験研究結果や日々蓄積されていくノウハウ、顧客データ、競合他社の情報等も含みます。
そして昨今、『情報』に続き第5の要素として挙げられるようになったのが『時間』です。
日常のひとつひとつの業務に要する時間はもちろんのこと、生産スピードや投下した資本の回収までに要する時間、経営判断や意思決定までに要する時間、全般を指しています。
言うまでもなく時間は無限ではありません。経営資源としての『時間』だってもちろん例外ではありません。
その限りある時間をどのように活用し、効率よく価値を生み出せるかが、大小問わず企業の昨今の大きな課題の一つとなっています。
『時間』の使い方改革
ここ数年話題となっている働き方改革だって、問題の本質は『ジカン』の使い方であるはずです。
この話題となると労使間での対立をよく言われますが、経営資源としての『時間』を正しく認識さえしていれば、労働者側からすれば『労働環境の改善』、経営者側からすれば『事業の効率化』が達成できるため、本来であればWin-Winとなるはずです。
『限られた時間の中で、どれだけの価値を生み出せるか』
今後これまで以上に、企業の成長速度は大きくこれに左右されるはずです(一個人としてもそうでしょう)。
1円の価値も産み出さない『仕事のための仕事』に莫大な時間や人や工数を割いている事業体は早かれ遅かれ淘汰されていく運命にあるでしょう。
『時間』の価値を再認識するプロセスこそを『働き方改革』と呼ぶのであれば、本来誰も反対なんてしないはずです。
『ジカン』は二度とは戻らない
少し話はズレますが、同じ経営資源であるはずの『カネ』や『モノ』と比べ『ジカン』の優先順位がどうにも低いのではないかと感じることがあります。
日本の教育上お金の大切さはよく語られる一方、時間の大切さとなると現状なかなかそうはなっていません(ルールやマナーとして『時間を守ること』の教育はされますが)。
『ジカン』の持つ特性の最たるものとして『不可逆性』が挙げられます。『カネ』や『モノ』は使えばなくなりますが頑張れば獲得することもできる一方、当たり前のことですが、『時間』はいくら努力をしても減る一方で増えはしません。他のあらゆる資源を最大利用しても取り返すことができないのです。
命限りある生物にとって『時間』は『生命』と同意です。
日々の生き方、つまり『人生観』と、日々の働き方、つまり『労働観』はどこかで地続きになっている以上、『時間』という概念に対する価値の置き方を再確認することは、自身の生き方・働き方の見直しにもなるのではないでしょうか。
資源としての『時間』の価値を正しく捉える
話を戻しますが、事業体の保有する資源としての『時間』の価値を見直すことで、
・作業効率のアップ
・意思決定スピードの迅速化
・時間の経過による内外環境の変化への対応
あたりへの打ち手への熱感はガラッと変わってくるのではないかと思います。
そしてまさに、これらこそがズバリ今日の企業経営に求められている要素であるというのは一目瞭然かと思います。
『時間』の価値の再認識はもはや社会からの要請でもあり、であるからこそ、停滞からの突破口になり得ます。
限られた時間、取り返すことのできない時間、すべての人に平等に流れる時間について考えることは、豊かな企業を育み、また一個人が豊かな人生を獲得するのに不可欠であるように、私は思います。
見直すべきは体裁や小手先だけの労働環境や経営戦略などではなく、もっともっと本質の部分にあるのではないか、ということになるかと思います。
補足:
現在、これらに『知的財産』を加えた6つの要素を経営資源と呼ぶ向きもあります。ここでいう『知的財産』とは、技術やノウハウ、人脈、ブランド等、目に見えない資産全般を指します。企業固有の『知的財産』を正しく認識し活用していくことが、現代の企業活動には求められています(知的資産経営)。
***編集後記***
先日商工会議所で、昨年の台風被害の件で県から助成金が拠出されるという話を耳にしました。
事業用資産に限るとのことですが、助成の対象は大きく、申請受付はこれからだそうです。
被害にあわれた方は少し調べてみてはいかがでしょうか。