細川会計事務所@千葉 の中の人のブログ

令和元年11月、千葉市内で独立開業した30代ひとり税理士のブログです。

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退職金を受け取った場合の税金について

今回は退職金を受け取った際の税計算やお手続きについてお話ししたいと思います。

 

人生100年時代といわれ久しいですが、2018年の日本の平均寿命は、男性が81.25年、女性が87.32年と、いずれも過去最長を更新しています。当然老後資金への関心は年々高まる一方です。

 

また、バリバリの現役世代で退職金を元手にビジネス等を始められる方も多くいらっしゃるかと思います。

 

退職金の支給は、長年の勤労に対する報償的給与として一時的に支払われるものであることなどから、通常の給与と比べ税制上大きく優遇されています。

 

  

退職一時金、3つのメリット

 退職金を一時金として受け取った場合、『退職所得』として税計算を行います。計算過程についてはおおまかに下記の通りとなります。

 

1.(支給額-退職所得控除額)×1/2=課税退職所得金額(A)

2.(A)×税率-控除額=退職所得に係る所得税額(B)

※復興特別所得税額が別途(B)の2.1%分加算されます。

※勤続年数が5年以下の役員等については、(A)は1/2されません。

 

税率及び控除額はそれぞれ以下の通りです。

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以上をふまえた上で、退職金一時受取りの主な3つのメリットについて説明していきます。

 

退職所得控除

退職金は額面に対してそのまま課税されるわけではありません。上記の式中にある『退職所得控除額』は、その会社の勤続年数に応じてそれぞれ下記の通り定められています。

 

勤続年数20年以下・・・40万円×勤続年数

勤続年数20年超・・・800万円+70万円×(勤続年数-20年)

※勤続年数は1年未満の端数切り上げ

※計算結果が80万円未満になる場合、80万円になります。

 

1/2課税

支給額面から上記の退職所得控除額を差し引いた残額をさらに1/2した金額が『課税退職所得金額』となり、税額計算の基礎になります。

 

分離課税

退職所得は分離課税、つまり、他のお給料などの所得とは別口で税額の計算を行います。

所得税は原則超過累進課税が適用されますので、所得が高くなると税率も高くなるのですが、分離課税ですとその心配はいりません。

 

計算例

『退職一時金として2,000万円』『勤続年数30年』のケースです。

 

1.まずは退職所得控除額をもとめましょう。

800万円+(30年-20年)×70万円=1,500万円

 

2.次に課税退職所得金額を計算します。

(2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円

 

3.最後に税額です。

250万円×10%-97,500円=152,500円

 

以上となります。簡単ですよね。

実際にはこれに152,500円の2.1%相当額が復興特別所得税として加算されますが、それにしたって実効税率は1%に満たないですし、退職所得の税優遇は非常に大きいものだというのがお分かりいただけたかと思います。

 

源泉徴収と確定申告について

退職所得については原則として、退職者が会社へ『退職所得の受給に関する申告書』を提出することで確定申告は不要となります。

この申告書を提出することで、会社は上記の税額を源泉徴収した後の金額を退職者へ支給することとなり、そこで当件の課税関係が終了するためです。

 

 仮に申告書の提出がなかった場合、一律で20.42%相当額を控除(特別徴収)された後の金額を受け取ることになりますので、その場合は確定申告で精算をする必要があります。多くの方は還付となるはずなので忘れないようにしてくださいね。

 

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年金受け取りについて

 退職金の受け取り方ですが、退職時に一括して受け取るいわゆる『退職一時金』と、退職後数年~数十年にわたり分割して受け取る『企業年金』とがあります。

一時金としてまとまった金額を受給する場合と比べ家計の管理が楽であること等から年金として受け取られる方も多くいらっしゃいます。

 

後者を選択した場合ですが、所得の種類が退職所得ではなく『雑所得』になり、国民年金や厚生年金などと同様の税制度が適用されます。

したがって、

 

・総合所得課税になるため、退職所得のような税優遇がなく、他の所得の多寡にも影響を受けてしまう。

・退職後、国民健康保険(後期高齢者医療保険)に加入される方は(大多数だと思いますが)、退職年金を受け取っている間社会保険料が上がってしまう可能性が高い。

 

あたりのデメリットについては考慮する必要があるでしょう。

 

老後の家計を支える大事なお金の話ですので、各々のご家庭の環境や健康状態、その他の所得の状況など、税金以外にもさまざまな要素が絡んでくる部分でもあります。退職の際にはご家族も巻き込んでよくよく検討されたほうがよいでしょう。

 

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まとめ

退職金を一時金受取りとした場合、上記した通り、所定の手続きさえしておけば確定申告等の手間はありません。くわえて税制上も大きく優遇されていますので、退職時の手間や税金のことだけを考えた場合、一般的には一時受取りとしたほうが有利なケースが多いでしょう。

 

しかし一方では、老後資金にするにせよ運用の元手にするにせよ、一般のサラリーマンの場合、退職金ほどまとまったお金を手にする機会は他にそうはありません。日々のお金の使い方や運用手段またはその成果に自信がないのであれば、年金受取りとするという選択肢はあってよいと思います。

 

また会社の社長その他役員の側からしても、退職金の税優遇を活かし、毎月の役員報酬を少し抑え、その分を役員退職金としてまとめて受け取ったほうがずっとずっと手取りのお金は増えます。

そういった場合に『出口戦略』として活用する生命保険は、節税対策の面からも資金繰りの面からもとても有用です。一度検討してみてもよいかもしれません。

 

 

***編集後記***

われらがジェフですが、昨日もヴァンフォーレ甲府相手に0-3の完敗。J3降格圏も目前です。

いったいどうしてしまったのでしょうか…。