今回は、個人事業主を卒業し、法人成り(新たに法人として事業を行う)する際のメリット・デメリットや、手続きの大まかな流れについてお話ししていきたいと思います。
法人成りの主なメリットは、節税と信頼
法人成りの主なメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
所得税は累進課税、法人税は定率課税
法人税の税率は所得にかかわらずおおよそ一定(中小法人である場合、所得800万円以下の部分につきましては軽減があります)であるのに対し、所得税は所得の多寡によって税率が大きく異なります。
所得税には生命保険料控除など控除も多く有利不利のボーダーの提示は実際に計算してみないと難しいのですが、一般的には所得が増えるにつれ、法人課税の方が有利になっていきます。
以下所得税の税率表です。
(国税庁HPより)
消費税が最大2年間免除
法人成り後、資本金額1,000万年未満である等一定の条件を満たす場合には、消費税が最大で2年間免除となります。
課税売上が1,000万円を超えているような場合には検討に値するでしょう。
自身に対する給与が経費となる
代表者ご自身に対するお給料を経費とすることができるようになります。
対外的な信頼
業種によっては大きなメリットとなってくるでしょう。
BtoBメインで営まれているような場合等では、法人としての安定性を確保しておくことで話が優位に進むような場面もあるかもしれません。
対金融機関を考えても同様です。
また、同じ法人でも合同会社より株式会社のほうが知名度と信頼性の面では上位に属します。
一方、法人成りの主なデメリットとしては、
・社会保険の加入義務が発生する
・設立費用が必要
あたりが挙げられるでしょう。
【やること1】個人事業の後片付け
以下、法人成りをするにあたっての手続きの流れとなります。
まずはこれまで行ってきた個人事業の清算作業を行いましょう。
廃業届の提出
税務署に廃業届を提出してあげます。
提出期限は、廃業後1か月以内です。
確定申告
個人事業主として当該事業に関する最後の確定申告を行います。
申告期間は通常通り、廃業年の翌年2/16-3/15となっています。
【やること2】会社設立の手続き
これらに関しては司法書士にご依頼されるか、または大変ですがご自身でも行うこともできます。
定款作成
定款とは、一言でいうと『会社の憲法』です。
会社を運営していくにあたり必要な基本的規則・情報を定めたものです。
具体的には名称や所在地はもちろんのこと、事業内容や目的、株式に関する情報なども記載します。
定款作成にあたっては、4万円分の印紙を付す必要があります。
定款認証(株式会社のみ)
公証役場へ行き、定款認証を行います。合同会社の場合には不要です(作成は必要)。
公に認めてもらうことで、定款に法的効力が発生します。
認証にあたり、手数料として5万円が必要となります。
法人設立登記
その後資本金の払込みを済ませ、法人の登記申請を行います。
『登記申請書』に一定の書類を添付し製本したものを法務局へ提出します。
またこの際、登録免許税として以下の金額がかかります。
株式会社・・・資本金額の0.7%(最低15万円)
合同会社・・・資本金額の0.7%(最低6万円)
【やること3】設立後の手続き
設立届の提出
まずは税務署に『法人設立届出書』を提出する必要があります。
その他必要にあわせて、青色申告の開始届や給与支払事務所の開設届等を提出します。
財産・債務の移行
これまで個人事業で使用していた財産等を法人へ移してあげます。
移す手段としては、
売買・・・法人が個人から財産を買い取る
現物出資・・・法人への出資金の一部を現物出資として財産で出資する
などがあります。
その他例えば自宅の一部を引き続き事務所として利用するといったような場合では、不動産の名義を法人へ移すようなことは普通しませんので、法人個人間で賃貸契約を結び、法人が個人へお家賃を支払うといったようなことも可能です。
名義変更
銀行口座や事務所、駐車場、水道光熱費、お車、借入金その他様々なものの名義を法人へ移してあげましょう。
最後に
細部は省きましたが、見ての通り、法人成りするというのはまとまったお金もかかりますし、やらなくてはならないことがてんこ盛りで大変なことではあります。しかし一方でメリットも大きく、業種や事業規模によっては積極的に検討してみる価値はあるでしょう。上には書きませんでしたが、良質な人材の確保という点からもメリットを享受することができるでしょう。
しかしこれらの手続きをすべて自前でこなすにはなかなか骨が折れます。その際は一度お近くの会計事務所や司法書士事務所へ相談してみることをおすすめします。開業後の経営サポートもあわせてお願いしておくと安心ですね。
***編集後記***
最近は面白くて勉強になる動画がとても多く、1日1動画をルーティンにしようかと密かに検討中です。
活字ももちろんよいのですが、人の言葉から学ぶほうが個人的には響きます。