細川会計事務所@千葉 の中の人のブログ

令和元年11月、千葉市内で独立開業した30代ひとり税理士のブログです。

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どうなってるの大塚家具 1~6月の第2四半期決算をうけて

ここ数年、若干ユニークな形でニュースや新聞を賑わすことの多い株式会社 大塚家具。

一連の騒動をお茶の間はもはや半ばあきれ顔で眺めていますが、同社は2015年の社長交代以後深刻な経営不振に陥っています。

 

先日2020年4月期第2四半期の決算短信が同社よりリリースされましたが、売上高は前期比で26.3%減、営業利益はおよそ24億円(!)の赤字と、現行期も引き続きかなりの苦戦を強いられている模様です。

 

今回はその第2四半期の決算書を使い、会計的視点から大塚家具の現状を解説していきたいと思います。

なおこちらの記事は投資家向けのものではなく、あくまで会計的視点から会計に明るくない方でも「へ~」と軽い気持ちで読めるようわかりやすく解説したものです。

会計外の部分の要素は極力省き、小難しい表現や難度の高い分析なども一切避けていますのでご了承ください。

 

損益計算書について

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売上高

現行期の上半期売上高は13,870百万円(およそ138億7千万円)、前年同期比較で26.3%の減少となっています。主な内訳としては店舗売上が12,680百万円(28.1%減)、コントラクト売上(受託契約に基づくもの)が1,162百万円(3.9%増)。

実店舗4つの閉店や同社事業と関連性の高い新築住宅の需要減少等の影響こそあれど、主軸である店舗売上がこうまでふるわないとやはり苦しいでしょう。

インターネット経由の需要に対応すべくホームページやECサイトの大規模リニューアルを行った影響でEC事業の売上高は前期比で好調とのことですが…。

また今後は越境ビジネスにも注力するとのことで、中国企業との業務提携を積極的に進めています。

 

売上総利益(粗利)

およそ69億円ほどとなっており、売上総利益率でみると前期の43.28%から6ポイントほど上昇し49.86%となっています。

小売業の平均が30%半ばであることを考えると非常に付加価値の高い商品を販売していることがうかがえます。店舗や棚卸の大規模な整理を行ったことや、業務改善案中にある「利益率の高い主力商品の集中販売」に注力した結果でもあるのでしょう。

 

営業利益

営業利益は前期の△3,506百万円から当期△2,397百万円(約24億円のマイナス)と依然として大きな赤字ではありますが、そのマイナス幅は若干小さくなっています。

店舗閉鎖による家賃の低減や広告費の抑制などにより販売費及び一般管理費が23億円ほど減少しており、その影響によるものです。

しかし依然として、非常に高水準の売上総利益率にも関わらず固定費の高さをカバーできていない状態です。この場合の対応策は3つ。売上を上げるか、利益率を上げるか、固定費を下げるか、です。

 

経常利益 及び 四半期純利益

経常利益は24億9千万円のマイナス、純利益は24億5千万円のマイナスとなっています。

 

貸借対照表について 

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資産の部

 総資産は約201億6800万円で前期比3.6%減となります。

目立つのは売上債権及び棚卸資産の減少(それぞれ2億円減)、そして差入保証金の5億円減あたりになります。差入保証金の減少ですが、こちらは店舗の閉鎖に伴うものでしょう。

外部から資金を注入したおかげでキャッシュはほぼ横ばいです。

 

負債の部

負債の部全体では73億円弱となり、前期からは10憶円弱(12.1%)の減少となります。その中でも仕入債務の2億円減及び事業構造改善引当金の3億円減が目立ちます。

事業構造改善引当金ですが、ここ数年の低迷を受け次世代店舗の構築を急ぐためのもので、店舗の過剰面積の縮小など店舗規模の適正化を主目的とするものとのことです。

さらに次世代店舗の構築ですが、インターネットの普及によるリアル店舗の意義の変化を受け、「店舗」「インターネット」「外商」の販売チャンネルの融合を目指しているということです。店舗疑似体験Webコンテンツ(いわゆるVR) の提供を開始しています(こちらです↓)

www.idc-otsuka.jp

 

純資産の部(自己資本比率 及び 1株当たりの純資産)

前年同時期が60.8%に対し今回は64.1%と、営業成績の不振にもかかわらず自己資本比率が増加しています。

これは2019年3月に行われた第三者割当による新株の発行などによるものです。注入額は26億円超。

ただし当期の赤字により利益剰余金は24億円超減少しているため、差し引きでは2億円ほどしかプラスになっていないのが苦しいところです。

 

自己資本比率を上げるには、大きく見て借入を返済するか利益を出すか増資を行うかのいずれかになります。

赤字により利益が外部に逃げているのにも関わらず新株の発行により発行済み株式数を増やせば(※)、1株当たりの純資産が676.19円から463.78円へと大幅減しているのも至極当然の話ですね。

     ※19,400,000株→28,460,700株

 

キャッシュフロー計算書について 

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 営業活動によるキャッシュフロー

29億5600万円ほどの流出となりました。営業利益がおよそ24億円のマイナスでしたので当然こちらも大幅マイナスです。そんな中でも前期との変動が大きかったのが棚卸資産、仕入債務あたりになりますが、昨年実施したという在庫セールの影響でしょうか。

 

投資活動によるキャッシュフロー

こちらは7億超の流入です。定期預金を5億円解約しています。また差入保証金の回収がおよそ2.8億円ありました。

ちなみに前期は24憶ほどの流入でしたが、これは固定資産や有価証券の売却によるものが主です。

 

財務活動によるキャッシュフロー

約27億の流入。もちろん新株発行の払込みによるものです。

 

 

以上をふまえ、総合すると5億円弱のキャッシュインとなります。

しかし、このたびの四半期のキャッシュ残高は2,991,754千円となっていますが、もし新株の払込み2,628,599千円がなければいったいどうなっていたのでしょうか…。

 

継続企業の前提に関する注記について

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四半期財務諸表に関する注記事項として、「継続企業の前提に関する注記」が付されています。

すべての企業は原則として、永続的な事業継続を前提として経営活動を行っているのですが(ゴーイングコンサーンといいます)、その事業の永続性に疑義を生じさせるような事象の発生もしくは企業がそういった状況に陥っている場合、こちらの注記が付されます。弊社、今ピンチです!ということですね。

 

 内容は投資家へ向けた状況説明とこの状況を打破するための対応策の明示です。

(1)は店舗の閉鎖による家賃削減について

(2)は採用を抑制することによる人件費削減について

(3)は積極的な商品開発やインターネット販売チャンネルの活用などによる売上高の回復や、ヤマダ電機との業務提携、中国をはじめとする海外販路の拡大などにより業績の回復を進めていきますというお話

(4)は増資による財務基盤の安定化について

 

最後に「しかしながら、これらの対応策は実施途上にあることから、現時点においては、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます」とのことです。

 

まとめ

極度の経営不振に陥る大塚家具は、2018年夏ごろからスポンサーを探していました。国内10数社に資金援助を打診したもののいい返事は得られず、そのうちにいつ手元資金が底をついてもおかしくない状態でした。

そんな中最後に頼ったのが中国企業のEasyhome社でしたが、同社も一度は資金援助は断ります。

しかしその後、そのEasyhome社から紹介を受けた同じ中国企業のハイラインズ社が救いの手を差し伸べました。ハイラインズ社を含む投資ファンド及びEasyhome社から総額26億円超の出資を受けることで大塚家具はひとまず事業の継続にこぎつけ、現在に至ります(正確にはアメリカの投資ファンドも増資を引き受けたそうですが、すでに取得株式の半分以上を手放している模様です)。

 

時流に応じる形で「インターネット」や「海外」への進出を積極的に進める同社ですが、後手後手となってしまっている感が否めないというのが正直なところでしょう。

また、前述した増資により同社は発行済み株式の過半数を外資ファンドに握られることとなりました。

今後、株式会社 大塚家具はいったいどうなってしまうのでしょうか。どうみても父娘ゲンカなどしている場合ではないように思えるのですが…。

 

 

***編集後記***

我が家の夏のしらせはねこのお腹のあせも。

毎年夏になるとかゆそうにお腹をペロペロなめています。

代わりにさすってあげると気持ちよさそうにひらきになります。

かわいい。