ROEとROA。
株式投資を行う方にとってはとてもとてもメジャーな指標ではありますが、中小企業の経営分析指標として日常的に用いている会社、会計事務所はそれなりに限られてくるのではないでしょうか。
どちらも経営上非常に有用な指標となります。
一度理解してしまえば難しくありません。
見ていきましょう。
ROE(自己資本利益率)とは?
ROEはReturn On Equityの略で、自己資本利益率(または自己資本当期利益率)といいます。
企業の収益性を測る指標であり、株主の投下した資本を利用し企業がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示します。
計算式は
ROE=経常利益(もしくは当期純利益)/自己資本(=純資産)
で求めることができます(簡単!)。
貸借対照表上、資産の調達部門として負債・純資産の部がありますが、そのうち返済義務のない純資産の部からどれだけうまく利益を生み出すことができたかをこのROEから見ることができます。
次の3社でみていきましょう。
A社:当期純利益 350万円 純資産の部 5,000万円
B社:当期純利益 200万円 純資産の部 5,000万円
C社:当期純利益 200万円 純資産の部 2,000万円
上記の計算式にあてはめるとそれぞれ、A社7%、B社4%、C社10%と出ます。
一見すると一番利益を出しかつ資本がしっかりとしているA社が一番良いように見えますが、ROEでみると一番効率よく利益を獲得しているのはC社だということがわかります。
株主側からすると、自分が出資した資本から効率よくたくさんの利益を生み出してくれる会社がいい会社です。同じ金額を投入するのであれば、この場合一番大きくリターンが見込めるのは事業効率の良いC社です。
一般的にはROE8~12%あれば優良企業といえるのではないでしょうか。
ROA(総資本利益率)とは?
ROAはReturn On Assetsの略で、総資本利益率(または総資本当期利益率)といいます。
ROEと同じく企業の収益性を測る指標であり、会社の保有する総資本を使ってどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示します。
計算式は
ROA=経常利益(もしくは当期純利益)/総資産
で求めることができます(これも簡単!)。
総資産ですから、自己資本だけでなく銀行からの借り入れなどもすべて含めます。その総資産で経常利益を割ることで、企業が利益獲得のために自己の持っている資産をどれだけ効率的・生産的に利用できているかがわかります。
ROAについては一般に5~8%あると優良とされています。
ROEとROAの使い方
利益を大きく出せば当然ROEもROAも上がります。
しかしROEとROAは互いに関連性をもち、相互に比較することで初めて見えてくるものもあります。
例えばROEの値は非常に優秀であるのにROAがふるわない場合、原因のひとつとして、財務体質として他人資本つまり金融機関等からの借り入れなどに依存してしまっている可能性、つまり、自己資本比率の低下を疑う必要があります。
景気や業績の悪化、金利上昇などの影響を受けやすく、財務の健全性について注視する必要があるでしょう。
資本集約型の事業(製造業など)を営んでいる場合、設備投資等に多大な資金を要することから他人資本が膨らむ傾向にあり一般に高ROE低ROAの状態になりがちです。
逆に高ROA低ROEである場合、株主資本をうまく利用できていない可能性があります。
借金が少ないということは財務健全性の視点からみれば大いに評価できるのですが、ROEがあまりに低い場合資金そのものをうまく使えていないわけですから、本業である事業の収益性自体をよく確認する必要があるでしょう。
まとめ
株主の視点から投資先のスクリーニングを行う場合、どちらかというとROE(自己資本利益率)を使われることが多いかと思います(ウォーレン・バフェットも投資目安としてROE15%を挙げています)。
しかし経営者の視点からするとどちらか片方だけを見ているのでは方落ち状態です。
互いに比較検討することで今まで見えていなかった経営上の課題・問題点が浮かび上がってくるかもしれません。
指標はただのツールです。
眺めて満足…で終わることなく「次」のためにうまく活用しましょう。
おつかれさまでした。
細川