近年税理士試験受験者数が減少しているそうです。
また、若い人たちがこの業界での就業を敬遠しているというお話もあります(こちらについては僕自身も実感があります)。
なぜなのかという理由を考えるときに、よく言われるAI化による業界シュリンクを主因とするのはどうも正しくないような気がするのです。
もちろんまったくの無関係であるはずはありませんし、数ある原因のうちのひとつではあるはずなのですが、そこに落とし込んでしまうのはいち業界人としてすんなり納得がいきません。
AI化の件はまた機を改めてお話しするとして、ここでは僕個人が実際に体験した、あるいは僕が同業者やお客さまから直接見聞きしたこの業界のよくないところを少しだけ挙げてみます。
・長時間労働
・低賃金
・パワハラ・モラハラ等のハラスメントが横行している
・税理士先生が横柄
・職員も横柄
・あいさつができない
・謝らない
・時間を守らない
・身なりが汚い、不潔だ
・教えてくれない
・教えてはくれるがひどく高圧的
・気に入らないことがあると怒鳴る
・業務、体制が古く効率的でない
・サービスが自己満足的
・家族が深く入り込んでおり組織や序列に大きなゆがみが出ている
まだまだあります。
昨今の情報化社会ですから、10-30代の若い人たちが職業選択をする際、ワンクリックで上記した現状が大量に目や耳から入ります。
あるいはすでにこの業界で働く人たちにしても同様です。実体験として日々蓄積されていく諸々が、自らの現状や将来を悲観的にさせます。
それでもあえて、社会に無数の職業がある中この仕事を選択するでしょうか。
例えば親族が税理士や会計士であり跡を継ぐ必要があるだとか、この業界に強く特別な夢や憧れを抱いているだとか、そういった場合は別ですが、もしかするとその夢や憧れすら砕かれてしまった方たちも中にはかなりの数いらっしゃるのではないでしょうか。
このような「事情」があるにも関わらず、なんでもAIのせいにするのは思考停止でしかなく、負けです。きっと10年後も20年後もAIを悪者にし続けていることでしょう。
語弊をおそれずに言いますが、この業界に限らず士業の多くはペーパーテストができるだけである程度偉くなれてしまいます。点数が取れるだけで「先生」と呼んでもらえます。一国一城の主として、普通に経営していれば食いっぱぐれもなくそれなりの生活もできるでしょう。
資格者としての有能さと経営者としての有能さがまったく別口であるのに気づいていらっしゃらないであろう方も散見されます。
ですから、逆説的ではありますが「そうではない」同業者さまはすぐにわかりますし、とてもうれしい気持ちにもなります。
僕は非力なので、仮にこの業界をなんとかしたいと思ってもそれを実行に移し貫徹する力はまずありません。
ですからせめて自分の身の回りの人たちには幸せであってほしいと思います。いつか人を雇う日が来たときもそうです。お客さまに対してもそうです。狭く小さな風呂敷しかありませんが。
税理士としてというより、人として、人を大事にし大事にされる人間になりたいと願います。
もしかすると今この業界に必要なのは、働き方改革ではなく生き方改革なのではないでしょうか。
いろいろ偉そうに書きましたが、その全てに、めいっぱいの自戒と憂いを込めて。
人は変わりますから…。